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すばらしい図書館員は視野の広いミッドフィールダーだ!

サッカーのミッドフィールダーに求められるのは、中田英寿選手や遠藤保仁選手のように視野が広く、ピッチを観察できる選手である。ボールばかり見ているのは、うまくない選手である。

これは打撃系の球技にも当てはまる。私は打撃系球技をしていたが、解説本を鵜呑みにして、球のインパクトの瞬間も目で見ようとして不自然なポジションで 打っていた。野球のバッティングでもそうだが、ボールに当てる瞬間は目で見ていない。人間の脳は優秀だから、インパクトの少し前で大砲の弾道計算をするよ うにボールの軌跡も瞬時に計算する。

このように球技には、広い視野をもつ選手が有利な競技が多い。


図書館職員にも似たような視野の広さが求められる。まさに遠藤選手のような図書館職員が、京都の左京図書館にはいる。糸井さんという女性の職員だ。ほかの職員との対比で説明するとわかりやすいだろう。

現在左京図書館には井上という職員がいる。色黒なのに雪女のような職員だ。まず彼女は、貸出の利用者の顔を見ない。本ばかり見ている。もちろん笑顔もない。

利用者の顔を見ない、ということは、利用者が何をしようとしているか、を瞬時に判断できないことを意味する。実際に井上さんはそういう職員だ。

利用者の顔を見ない、ということは、利用者の顔を覚えにくい、ということにつながる。利用者の顔を覚えない、ということは、利用者に応じてカスタマイズされたサービスを提供できない、ということだ。

何年間も、月に何回も予約取り置きをお願いしている利用者に、毎回印鑑を押すように同じ決まり文句を言う職員がいる。「録音資料が付属していますのでカウンターにお返しください」「相互貸借資料なのでこちらのカウンターにお返しください」

このタイプの職員は、左京図書館の高井主任、臨時職員の安岡さん、以前左京図書館に勤めていた増野さん(現在右京中央図書館)が該当する。これらの職員は、明らかに利用者の顔を覚えているのに、だ。

そういった職員は「平等なサービスの提供」の意味を拡大解釈しているように思う。あるいは、指示されたことを杓子定規に実行しようとして、結果的に利用者 に不快感を与えることになっている。綺麗なテーブルクロスが目の前にあるのに「テーブルクロスはもう洗ったのか」と尋ねるようなものである。井上さんがそ のような職員に該当するわけではない。井上さんは別の点で思慮に欠ける職員である。

日本語を話せない華人が予約取り置き本を借りようとしたことがあった。井上さんはいつもの冷たい対応で、中国語と身振りで尋ねられても日本語で押し通す。 英語を交えても、面倒そうに対応する。京都市立図書館では、AV資料は一度に2点まで借りることができる。その利用者は1点既に借りていた。だからもう1 点だけ借りられるのだ。しかしその日予約取り置き資料には、AV資料が2点届いていた。そのような場合、ほかの職員なら「どちらを借りられますか」と尋ね るものだ。しかし井上さんはその質問をしないまま任意の資料を貸し出し処理してしまった。その日はたまたまどちらの資料でもいい気分だったのでよかった が、そうでなかったらいたく気分を害されたことだろう。

井上さんは、日本語以外の言語で話しかけられて、「面倒だな、こいつ」と言わんばかりの表情で終始対応したとのことだ。

なるべく利用者の顔を見るようにしている糸井さんのような職員は、利用者の気持ちや行動を汲み取ろうとしているから、利用者の考えていることを察知する能力に長けている。これは長年左京図書館に通っているのでよくわかる。

予約取り置き本が多数左京図書館に届いていたことがあった。その日は糸井さんが貸出席に座っていた。私は常に6冊以上は本を借りているので、一度に借りら れる点数は多くない。さあどれにしようかと迷っていると、トランプのポーカーで上がり!を宣言するように、取り置き期限の古い順に並べて提示してくれた。 そうするようにお願いしたわけではない。自主的に思い遣りの心から、そうしてくれたのだ。

思いやりの極致をそこに見た。利用者は、なるべく<到着の早い本>を借りるのを優先したい。そうしなければ、期限切れで借りられない可能性が高くなるからだ。同時に、そうなれば図書館に余計な手間をかけてしまうことになる。しかし<今すぐ読みたい本>というのもある。さらに<鞄のスペースと相談して、その日に借りる冊数を判断する>という要素も考慮する。土砂降りの雨の日なら、大型本は借りたくない。濡れるリスクを恐れるためだ。鞄をもって激しい行動をすることが予想される日には、CDやDVDを借りたくない。ケースにひびが入ることを恐れるためだ。また<最大貸出点数の10点まで、あと何点>ということも考慮する。利用者は、これらの多くの要素を素早く計算するのだ。後ろにほかの客が並んでいると、早く判断しなきゃ、と焦ることもある。

糸井さんはそういった利用者の判断を助けるために、左京到着順の古いほうから順に並べてくれた。いつもの気持ちのよい爽やかな笑顔とともに、だ。

他の職員にも真似をしてもらいたいとは思わない。糸井さんに、別のときにもそうしてほしいとも思わない。こういった行動がとっさにでるのは、彼女の職業意識が反映しているのだ。

常に利用者のことを優先する糸井さんだから、とっさにそういった行動ができるのだ。高い職業意識を持っているから、利用者の顔を見て応対するのだ。利用者の顔を見るから、利用者の考えていることがすぐにキャッチできる。

利用者の顔も見ようとしない職員は、明らかに利用者がしようとしていることを瞬時に把握できない。丸尾さんもその一人である。華人が貸出の際身振り手振り で説明しているのに、たぶんわざとだが正反対の意味でキャッチした。その利用者は<こちらの資料を本日借りたく>、<こちらの資料はもうしばらく取り置き していてください>と言わんとしていた。他の職員にはジェスチャーを使えば通じるのだが、丸尾さんだけ正反対の意味に取った。

丸尾さんは「ボールばかり見て肝心のゲームを見ていない選手」で、糸井さんは「視野が広くゲームの流れを瞬時に把握できる視野を持った選手」ということが、よくわかったと思う。

糸井さんはまさに図書館界のファンタジスタだ。糸井さんに関して、まだまだ書けていないことがある。別の機会に改めて書こうと思う。実にすばらしい選手だ!


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