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なぜ世間の人がレファレンスサービスを図書館に頼まないかの理由

レファレンス依頼の質問の分野は人文・社会・郷土関係のものに大きく偏っているのだろうか。レファレンス協同データベースのこのページを見る限り、そうは思えない。自然科学・工学が特に目立って割合が少ないということはなさそうだ。

岩倉図書館の仲田義明氏は、文学や家政関係の質問の割合が多いと言っていた。

京都府立図書館や京都市立図書館に自然科学系質問を持っていったのは、仲田氏にその情報を聞いた後だった。京都府立の今泉というレファ女も、京都市立中央のふにゃふにゃ喋るレファ女のフニャ子も、質問を全部聞こうとせずこういって撥ね付けた。

「百科事典でお調べになったらどうですか」
「博物館へお尋ねになったんですか」

ある館が処理するレファレンスの内訳の統計を取ることもあるだろう。理工系の割合が目立って小さい館は要注意だ。職員が拒絶している可能性もある。京都府 立や京都市立中央(≠右京中央、伏見中央、醍醐中央)の場合はあからさまなケースだ。しかし表立って拒絶はしないが非言語的に嫌そうにする場合もあるだろ う。あるいは手を抜いた回答をすることもあるだろう。

もしそういった場合に遭遇したら、ユーザーは次回からどうするか。次回からは、図書館の司書にレファレンスを頼まなくなる可能性が高くなる。図書館に頼むよりも、自分でインターネットで調べたほうがいいや!と考える。

これを「悪循環」という。

図書館の司書にレファレンスを頼まないのは、以下のような原因が考えられる。

(1)最初からユーザーが図書館に頼まない場合:「図書館の司書は女性が多い。女性には理工系が少ない。したがって任せても高いレベルは望めない」と考えるケース。

このケースも結構あるに違いない。

(2)上に記した「悪循環」のケース。実際に図書館の司書に頼んでみて、撥ね付けられる。あるいは渋々受理されたものの、回答が著しく劣っているとわかった場合。

(3)そもそも「レファレンス」あるいは「参考調査業務」という概念を知らない場合。ここ十年ほどの大学生では常識なのだろうが、それ以前の学生は「レファレンス」というサービスを知らない人が多いだろう。

私は(1)と(3)に関してはやむを得ないと考える。しかし(2)は許せないと思う。そういった図書館が日本にあってはならない。

もちろん(3)に関して図書館ができることはいくつかある。カウンターに「受付」だけでなく「レファレンスサービス」も明記する、広報につとめるなどだ。

(2)に関して補足しよう。京都市立中央(≠右京中央、醍醐中央、伏見中央)と府立の理系質問の撥ね付けに関しては、以前に紹介したとおりだ。

左京図書館で、次の質問をした。「盲腸の役目を教えて」これはインターネットでも調べられるような質問だ。しかし私はレファレンスのレベルを探るためにこの質問をしてみた。

調べた文献のうち2冊にポストイットが貼ってある。その箇所を読んで、がっかりした。その2冊の箇所とも、「なぜ盲腸が存在するのか」という話とまったく関係のない箇所だったのだ。

その2冊とも割りとむずかしめの本だった。担当司書はこう思ったのかもしれない。「どうせ理解できないんでしょ。」

文献の多寡の辻褄合わせにその2冊を加えたのだろう。あるいは本当に担当司書が、読んでいる内容を理解できていなかったのかもしれない。その司書にとって、該当箇所がなんとなく盲腸の機能を説明している感じがしたので、それを加えた可能性がある。

これは司書の能力の問題でもある。しかし私は京都市立図書館20館の力で分担しようとしない運営の知恵と実行力のなさを問題視した。

少し話しが脱線する。レファレンスに関して解説したある本のことを覚えている。そのなかで、「図書館司書としてのディシプリンをまず身につける。専門知識は基本的には必要ない」といった旨のことが書かれていた。

人がひとりでできることは限られている。専門知識を得ようとすれば、時間がいくらあっても足りない。だからまず図書館司書として身に着けるべき技術を得る事が一番大事だ。それはわかっている。

しかしそれで安住してはいけないのだ。図書館司書として恥ずかしくないレベルに達したら、自分の専門性をほかにも広げる努力をすべきなのだ。

そうでなければ、左京図書館のケースのように、医学の簡単な本もろくに読みこなせず、ピントはずれの箇所にポストイットを貼り付けるといった羽目になる。

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