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対決・OKWave対図書館のレファレンスサービス(パート2)

「Q&Aサイトと公共図書館レファレンスサービスの正答率比較」(辻慶太他)は面白くよませてもらった。『図書館界』通巻351号 605ページから引用する。

チャットで回答するQ&Aサイトは今のところ無い。多くの図書館の協力を前提に、チャットによる同期型DRSを実現すればより迅 速な回答ができる。またその際、図書館員が利用者に自分と同じ画面を見せる co-browsing などの説明機能を用いるならば、それにかかるコストは別として、Q&Aサイトより人気を呼ぶ可能性がある。


これを読んで、同志社今出川のレファレンスのスタイルは co-browsing というんだと知った。チャット時の co-browsing は離れた場所でのことだが、対面レファレンスで画面をふたつ、司書用と利用者用が同期で表示するというのも co-browsing と言えるだろう。あれはすごく親切な方法だ。他の大学図書館もお金に余裕があれば参考すべきだろう。同志社以外で見たことがない。


ご存知のように、チャット型レファレンスは日本では普及していない。この論文の著者がこう述べている。 co-browsing を用いたチャットレファレンスを図書館レファレンスが採用すれば「Q&Aサイトより人気を呼ぶ可能性がある」。

私はそれはないと思った。ここで想定されている「Q&Aサイト」が Livedoor ナレッジ (Livedoor Knowledge)だったら、すでに図書館レファレンスが勝っている。しかし OK WAVE や YAHOO 知恵袋 が相手なら、図書館レファレンスはずっと勝てないだろう。インターネットとはそういうものだ。

図書館レファレンスは基本的に回答者を指定する。よくてグループに指定だ。人はひとりでできることは限られている。したがってジェネラリストがどれだけ頑張って専門知識を得ようとしても、限界がある。

一方Q&Aサイトは専門家の目にも触れる。団塊の世代がどんどん退職するので、そういった方が親切に回答してくれることも多い。一方バリバリの現役と思える人からも回答がくる。

そういった意味で図書館レファレンスにはハンデがあるのだ。だから複数の館のレファレンス担当の司書が協力する必要があるのだ。あるいは国会図書館のレファ協に参加して、積極的に力を出し合うのだ。

そういった努力と工夫があって初めて、専門家も一目おく回答を提示できるのだ。

この論文は、Q&Aサイトと図書館レファレンスサービスとのあいだに大きな差は無かった(統計的有意さはなかった)と言っている。

これを読んで図書館レファレンスに従事する人はうれしくなるか、悲しくなるか。

喜んでいるばあいではないのだ。これは図書館レファレンスにハンデがあることを示唆している。

まずQ&Aサイトの回答者は、もし間違えてもだれにも怒られない。だから間違いを仮に含んでいたとしても気にしない。一方図書館レファレンスは多くが公立 なため、「仮に間違いを含んでいたとしても、それを凌駕する親切さと量の多さでカバーできる」といった考えを普通はしない。公務員は、間違いを一般の人間 より極端に恐れるものだ。だから公務員のレファレンス司書は「90点かける7(=630)」よりも「100点かける6(=600)」を志向する傾向にあ る。行政が民間に委託をしていたとしても、多かれ少なかれ傾向は同じだ。仕様書にしばられるからだ。

図書館レファレンスは回答者を指定する。回答レベルも一定の高さが求められる。質問の受理もえり好みしていられない。いわば強制の宿題である。

しかしQ&Aサイトは、自分の答えたい質問を選べる。しかも期限の強制がなく自由意志で調査に取り組める。しかも「背伸び」せず自分の知識の力量範囲で取 り組める。それに回答者は素人から専門家まで、どんな人でも回答できる。専門家の回答にはいくら図書館司書が背伸びしても届かない。

図書館レファレンスには「背伸び」してでも一定のレベルの回答が求められ、しかも期限も強制される。

どちらの方法が「のびのびと」課題に取り組めるか、明白だ。人は強制されるよりも自律的にのびのびと仕事したほうが力量を発揮できるものだ。

Q&Aの回答には「くつろいで」「背伸びしないで」「自分が回答したい質問を自由に選べて」という属性がある。前2者は「Q&Aサイトと図書館レファレンスのどちらが優秀か」というテストにとって「ハンデ」となるはずだ。しかし結果は、統計的有意さがなかった。

ということは、遮二無二に青筋立ててガンバッった図書館司書が、くつろいでコーヒーでも飲みながら、あるいはインターネットFMでも聞きながら気楽に取り組んだ人と同じくらいの正答率というのは危機感を感じてほしい結果だ。現状の、特定の司書に任せるといったスタイルでは、ますます通用しなくなるということを強く予感させるものだ。つまり、世の人がますます図書館レファレンスといった存在に存在価値を見つけにくくなるということだ。インターネットのQ&Aサイトのほうが魅力があるということだ。

私は図書館レファレンスに存在意義があると思っている。ありがたくも思っている。だから頻繁に利用するのだ。

これはインターネットに独特の「マルチポスト嫌悪」といった不文律があることと絡んでいる。これは別の記事で詳述したい。

この不文律があるため、私にとって図書館レファはなくてはならないサービスなのだ。

(パート3に続く)

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