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情報公開コーナーのホリえもん

いくつかの情報公開請求を行った。今手許に松井茂記著『情報公開法』がある。インデックスも含めて555ページの大著だが、実際に情報公開請求を体験しているので内容が身近に感じられ、楽しく読んだ。まだ100ページほどしか読んでいないが、この分だと3日以内で読み終えるはずだ。この記事に引用するものはすべて松井茂記『情報公開法』(有斐閣)からである。

京都市役所の情報公開課には堀光昭という主任がいる。私の請求手続きの際には彼が担当することが多かった。小太りでメガネをかけ腕には今時ミサンガのような腕輪を嵌めている。お世辞にもかっこいいとはいえないが、私はひそかに彼のことをホリえもんと呼んでいる。仕事は熱心だ。情報は出し惜しまずその点では親切だ。しかし<人によっては小馬鹿にしていると勘違いされかねない>早口とぶっきらぼうさ、質問によっては<勝手にしてください、わたしは知らないもんねー>と言わんばかりの口ぶりが癪に障るといえばそうだ。しかしそういった嫌味な要素に目をつぶれば、市民にとってはありがたい存在だ。

彼が早口でぶっきらぼうだ、というのを補足しよう。彼はある質問に対して「一義的」というあいまいで頻度の低い単語を含んだ文を早口でまくしたてた。決して相手に一定の敬意を払った態度ではないが、私はその逆よりはるかに評価している。中には質問してものらりくらりと答えない人間も多いなかで、見かけの態度はいいとは言えないけれども実が伴っているのはありがたいと思う。松井氏の本の次の箇所を見てほしい。


「ただし、開示請求対象の行政文書を特定するのは行政機関の責任であり、開示請求者には、行政機関が合理的努力によって文書を特定しうる程度の具体的な記述のみが求められる。
それゆえ、「行政文書の名称」も、正式の名称である必要はない。正式の名称とは違っていてもかまわない。また、行政文書の名称がわからなくても、開示請求対象文書を特定しうる事項が記載されていればそれでよい。
この点、一般国民の立場では、行政機関がどのような文書を保有しているのかを知ることは困難である。開示請求者の便宜のためには、行政機関の保有する文書のインデックスが整備され、容易に検索可能であることがぜひとも必要である。」 (p111-112)

ホリえもんは、この点で仕事をきちんとしてくれた。一般人は、行政がどのような文書を保有しているかわからないものだ。しかし情報公開の請求書にはどんな書類を見たいかの意思表示をはっきりすることで、情報公開課の職員が請求者との密なコミュニケーションを通して明確にしてくれる。次も見てほしい。

「たとえば、行政機関が外部の法人等に会議や調査検討を委託したような場合、その委託を受けた法人等は情報公開法が適用される行政機関ではないので、その法人等が作成した会議録や資料は、行政機関に提出され受領されない限り情報公開の対象とならない。だが、これでは、行政機関の意思決定の隠れ蓑として外部の法人等が利用されることになる。...より根本的には、このような場合には委託に際し、会議録の作成と会議録や資料等の提出を義務付けておくことが必要である。」(p92)

これはまさに私が京都市・京都府にも要求したい事項だ。主要政党は次回の選挙にはマニフェストにぜひ掲げてほしい。中央には「独立行政法人等情報公開法」があるが、地方には存在しないし、財団法人なども情報公開の対象にしている自治体は数えるほどらしい。

そういった法的根拠がなければ、市から業務を委託されている財団法人などが自主的に情報を公開しようとしない場合には、市民にとって不利益だ。京都市立図書館は、財団法人・京都生涯学習振興財団が業務委託を受けている。歴史として図書館の運営コストの削減が一番にあったようだが、民間活力というのも念頭にあったらしい。しかし実際には管理職員の一部か大半は市の職員だ。やろうと思えば不正もできる。しかし財団を通じて行う契約は情報公開請求の対象外だ。だから監視のしようがない。

現実に「京都市図書館とTRC、丸善、京都図書組合間の契約書を閲覧したい」という請求を行った。しかし文書は不存在という回答だった。このことを伝えた市教委総務課の酒井係員は財団が持っているだろうということを一言述べた。

私は残念だった。中央図書館側が自主的に、アスニー(例の財団)に対して文書の有無を照会し、有れば提出させるべきではなかったのか。こうすることが情報公開請求法の真意ではないのか。請求者の便宜をはかることも、だいじな要素ではないのか。

資金前渡出納簿を閲覧した。時系列に過去5年の情報を見られた。今度はこれを時系列ではなく「弔費」「慶金」「会費」のソートで出力をお願いした。しかしこれは情報公開課の職員が、それは不可能だと言った。「あるがまま」の資料を出すのが主意だそうだ。しかし松井氏の著書でも書いてあるが行政は請求者に可能な限り便宜を図る形でのフォーマットで提出すべきであるという。フォーマットとは、たとえば pdf とか text 形式とか dvdプレーヤーだとかそういったことを指すのであって、ソートまで細かいことを念頭に入れて言っているのではないのかもしれない。しかし私はそこまで期待している。そうでなければ現状では、利用者がコピーして、(スキャナーを持たない人は)パソコンに打ちなおしてデータベースを作り、ソートする、という面倒な作業を強いられる。もし行政がデータベースの形で書類を保持しているのならば、請求に希望してある形で出力するのが理想だ。

堀光昭は私が請求した横山勝と長尾浩への時間外勤務命令簿の請求について電話で意志確認をしてきた。一度以前に同じ書類を請求して閲覧したことがあるためだ。彼は「前回閲覧した際コピーすべきだった」ことを述べ、不満そうだった。わたしは今回は前回請求しなかったタクシーチケット券についても請求するので、その際に時間外勤務と照合して不正がないかをチェックする予定だった。だから私の請求に理がある。広報などですでに一般に知れ渡っている事実が情報公開の請求対象にはならないことは知っている。しかし「同じ書類を請求してはならない」という規定は情報公開法のどこにも書いていない。情報公開課の人間、ないし請求対象の課の人間の手間がかかるという理由で、憲法第21条にうたわれている国民の知る権利を制限してはならない。そこはさすがに行政マンだけあって、ホリえもんは「請求するな」とは言わなかった。ただ請求をあきらめさせるようにもっていきたかったようだ。だから彼は法律は犯していないのだ。我々はそういった彼らのペースに乗らず、知る権利を堂々と行使したいものだ。憲法21条の知る権利を認めない法学者もいるようだが、<喝だ!>

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